大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)750号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人渡辺伝吉の上告理由は後記のとおりである。

同第一点について。

記録を調べてみると、第一審において上告人は本件手形の裏書譲渡を不知と答え、かつ甲第一号証の手形についても、裏面の記載を不知と述べていることは所論のとおりである。しかし上告人は、裏書を認めたことを前提とするとうかがえる本件裏書が期限後裏書であるという主張をしているのみならず、裏書の点について当事者間に争がない旨の第一審の判示に対し、上告人は原審において同様の陳述をし、弁論終結にいたるまで異議又は訂正を求めた形跡は認められない。してみれば原審が裏書の点について当事者間に争がないと判示したことは当然であつて違法とは認められず、論旨は採用することはできない。

同第二点について。

裁判上手形金の支払を請求する場合は、手形の呈示を伴わないでも、訴状の送達により債務者を遅滞に付する効力を生ずると解する趣旨は、大審院当時より多くの判例の存するところであり、当裁判所においてもこれと異なる解釈をすべきものとは認められない。従つて原判決が右の趣旨に基き、上告人に対し本件支払命令送達の日の翌日から法定利息の支払を命じたのは正当であつて違法ではない。所論は右の趣旨と異なる独自の見解を主張するに帰し採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例